本講座における再生医療の製造システムの‘Decentralization’への取り組み

再生医療等製品は非常に高額であり、実用化促進、医療経済の観点から、その品質を確保しつつ低コストでの製造を実現することは喫緊の課題*1)です。

三重大学大学院医学系研究科 個別化がん免疫治療学講座では、新しいキメラ抗原受容体遺伝子導入T(Chimeric Antigen Receptor-T; CAR-T)細胞療法の医師主導第I相試験の実施に向け、上記の課題を克服のために、ダイダン株式会社の新しいコンセプトであるパッケージ型細胞培養加工ユニット(オールインワンCPユニット®*2))と、ミルテニーバイオテク株式会社の完全閉鎖式自動培養調製装置(CliniMACS Prodigy®*3))を組合せた製造システムによる再生医療等製品の治験製造を開始いたします。

本講座では、再生医療等製品の品質を確保しつつ低コストでの製造を実現するだけでなく、これらを組合せた製造システムにより、再生医療等製品の製造所を分散化することによる配達時間、輸送コストを削減し、個々の患者様の治療に迅速かつフレキシブルに対応する‘Decentralization’に取り組み、再生医療の実用化促進を目指しています。

*1)再生医療等製品における製造の課題とは

近年、がんに対する再生医療等製品としてCAR-T細胞療法が注目されていますが、生きた細胞を用いるため、多くの点で医薬品とは異なる品質特性を有しており、以下の問題点等があります。

【問題点】

  • 主に作業者による手作業となるため、多くの熟練した人員の配置が必要であること
  • 再生医療等製品は最終的に無菌化できないために、全工程を通して無菌操作を行う必要があること
  • 品質は調製者の技術に依存し、品質の担保、同等・同質性の確保の観点から、技術移転や製造所の追加が困難になる可能性があること
  • 品質の確保によっては凍結保存ができない可能性があること
  • 一般的な細胞加工施設は大規模であり、環境モニタリングを含めその維持管理だけではなく、細胞加工施設、空調等の老朽化に伴う改修工事には莫大なコストを要すること

*2) オールインワンCPユニット®とは

再生医療等製品の開発では、製造施設の新設、追加、変更に低コストかつフレキシブルに対応することが求められます。オールインワンCPユニット®は下記の特徴を有しています。

  • 必要な機能、エリアをコンパクトにまとめ、建設、ランニングコストを低減
  • 機器や細胞調製プロセスに応じて、ユニットのサイズ、エリア構成等をフレキシブルに設計
  • シンプルな空調設備を装備しつつ、機密な気流制御によって各区域の清浄度、差圧の設定が可能
  • 大掛かりな工事が不要で、既存施設に短工期(1〜2週間程度)で設置可能
  • 規模拡大、用途変更にフレキシブルに対応

*3)CliniMACS Prodigy®とは

使用目的に応じて、目的細胞の分離、拡大培養、そして遺伝子導入等の一連の細胞調製プロセスを自動に処理することが可能なスマート装置であり、下記の特徴を有しています。

  • シングルユースのプラスティックチュービングセットを用い、完全閉鎖系にて細胞処理を行うことによるコンタミネーションリスクの回避
  • 細胞調製プログラムを用いた自動処理により、ヒューマンエラーの回避や、将来的な機器増設(製造能力の拡大)、技術移管が容易(文責:奥村)