がん免疫療法について

免疫チェックポイント阻害抗体

細胞性免疫反応は主にTリンパ球が担当します。がん免疫療法でもキラーT細胞ががん細胞を攻撃・破壊します。しかし、がん細胞がその攻撃を免れるために、T細胞を疲弊させる信号に送る仕組みを悪用することがあります。その信号をPD-L1といい、T細胞側の受取りをPD-1といいます。本来は免疫反応を収束するための備わっている免疫のブレーキ役です。また、がんの組織やリンパ節には免疫反応を低下させる制御性T細胞(Treg)という細胞が潜んでいて、がん免疫反応を全体に抑えています(下図参照)。これらの免疫反応をコントロールしている分子を「免疫チェックポイント分子」と呼び、この抑制系をブロックして免疫反応を回復させるクスリを免疫チェックポイント阻害剤(抗体薬)といいます(下図参照)。

抗PD-1抗体のニボルマブ(商品名:オプジーボ)とペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)が日本でも承認されています。抗CTLA-4抗体は主に制御性T細胞を抑える働きをもち、イピリムマブ(商品名:ヤーボイ)が承認されています。これらのクスリで治療した場合、20~30%の例でがんの大きさが縮小します。中にはその効果が長期間続く例があることがわかってきました。

一方、免疫チェックポイント阻害剤により自己細胞を攻撃するT細胞が活性化され、自己免疫性疾患(甲状腺疾患、下垂体疾患、糖尿病など)が副作用として起こることがあります。