単純ヘルペスウイルス1型自然変異株HF10の腫瘍内投与療法
1型ヘルペスウイルスには、40歳代の日本人では約60%以上が感染していると言われています。1型ヘルペスウイルスに感染した患者さんの体内では、ウイルスを抑えることのできる抗体(こうたい)がつくられます。このようなことから、感染した後の1型ヘルペスウイルスは、ときに唇の周辺に小疱(しょうほう)をつくる口唇ヘルペスなどの症状を出すことがありますが、深刻な病気をおこすことなくからだの中に潜んでいます。
HF10は弱毒性の1型ヘルペスウイルスで、がんに投与するとがん細胞が溶解(破壊)されて縮小することが期待できます。また、これまでの動物を用いた研究では、がん細胞に対する免疫応答も誘導され、HF10を投与していない場所のがんにも縮小効果をもたらすことが示されています。
HF10はがん細胞によく感染し増殖してがん細胞を溶解(破壊)しますが、正常細胞では増殖しにくいウイルスです。また、通常のヘルペスウイルスと違って脳に侵入しにくく脳炎を起こしにくい、などの特徴を持ち、安全性が高いと考えられています。また、この臨床試験は1型ヘルペスウイルスに感染したことがあり1型ヘルペスウイルスを抑えることのできる抗体を持っている患者さんを対象としておりますので、HF10を投与しても正常細胞に感染して症状を出すことは少ないと考えられます。万一、HF10が正常細胞に感染して症状を出しても、アシクロビルやバラシクロビルといった広く使われている抗ヘルペスウイルス薬が効くことから、治療することができます。
この試験は、タカラバイオ(株)との共同研究で行っています。
参加適格基準 《 参加できる人、参加できない人 》
この臨床試験に参加できるのは以下のすべての条件を満たす患者さまです。
- 細胞診あるいは組織診で診断された非中枢神経系悪性固形腫瘍を有している方。
- 標準治療で治癒が望めない方。
- 同意取得日より3ヵ月以上の生命予後が期待できる方。
- 試験薬が投与可能、体表からのアプローチが容易、かつ測定可能な病変がある方。
- 抗HSV-1(1型ヒトヘルペスウイルス)抗体が陽性である方。
- 20歳以上の方。
- PS(Performance Status:全身一般状態)がグレード0、1、2の方(付表参照)。
- 以下の条件を満たす臓器機能を有する方。
・白血球数・・・・・・・・・2,000 /mm3以上
・リンパ球数・・・・・・・・・800 /mm3以上
・ヘモグロビン・・・・・・・・・8.0 g/dl以上
・血小板数・・・・・・・・50,000 /mm3以上
・総ビリルビン(T-Bil)・・・・・正常上限の1.5倍以下
・AST(GOT)・・・・・・・・・正常上限の3.0倍以下
・ALT(GPT)・・・・・・・・・正常上限の3.0倍以下
・クレアチニン(Cr)・・・・・・正常上限の1.5倍以下
・PT INR・・・・・・・・・・・正常上限の1.5倍以下 - 原疾患に対する前治療(薬物療法、放射線療法、手術、免疫療法)から3週間以上経過しており、かつ、本試験の治療開始日に前治療から4週間以上経過していることが見込める方。
- ご本人の同意を文書で得ることのできる方。
この臨床試験に参加できないのは以下のいずれかの条件に該当する患者さまです。
- 重篤な薬剤過敏症の既往がある方。
- HBs(B型肝炎ウイルス)抗原、HCV(C型肝炎ウイルス)抗体、HIV(エイズウイルス)抗体のいずれかが陽性である方。
- 同意取得日より6ヵ月以内に治療を要した自己免疫疾患を有する方。
- 活動性の重複がん(同時性重複がんおよび無病期間が5年以内の異時性重複がん)を有する方。
- 緊急の治療を必要とする臓器転移、骨転移などの病変がある方。
- 抗HSV薬を使用している方。
- ステロイド剤あるいは免疫抑制薬の全身投与を行っている方。
- 以下に示す重篤な合併症を有する方。
・重篤な心疾患やコントロール不良の狭心症
・同意取得日から6ヵ月以内の心筋梗塞
・コントロール困難な糖尿病
・抗生物質や抗真菌剤の全身投与を要する活動性の感染性疾患
・その他、治療の実施に重大な支障を来すと判断される合併症 - 中枢神経系に転移性病変を有する方。
- 投与可能病変の出血のリスクが高い方。
- 投与可能病変の頭蓋内、胸腔、腹腔への穿通・穿孔のリスクが高い方。
- 抗血小板薬を使用中である、あるいは試験参加中の休薬が困難である方。
- 腫瘍内投与が安全に施行できないような抗凝固療法を受けている方。
- 妊娠中、あるいは授乳中である方。
- 本試験参加中に有効な避妊法を使用することに同意しない方。
- その他、本試験の対象として担当医師に不適当と判断された方。
付表:
PS(Performance Status) [ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)基準]
| グレード | Performance Status |
|---|---|
| 0 |
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同様にふるまえる。 |
| 1 |
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが歩行、軽労働、座業はできる。例えば軽い家事、事務など。 |
| 2 |
歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助がいることもある。軽労働はできないが、日中の50%以上は起居している。 |
| 3 |
身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。 |
| 4 |
身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。 |