がんワクチン臨床試験 CHP-NY-ESO-1がんワクチンとMIS416併用療法

以下のように、がん抗原蛋白質のNY-ESO-1蛋白質を合成して、コレステリル・プルラン(疎水化多糖、糖の一種)の中に取り込ませた複合体を作製して、”ワクチン”とします。

 

この臨床研究では、”NY-ESO-1” というあなたのがんの細胞が持っているたんぱく質(がん抗原と呼びます)を、ワクチンとして注射して、体内でがん細胞に結合する抗体やがん細胞を攻撃するTリンパ球を増やそうとするものです。MIS416はCHP-NY-ESO-1ワクチンと併用することにより、ワクチンの免疫反応を高めることが期待できるお薬です。対象疾患はNY-ESO-1抗原陽性の前立腺がんです。なお、CHP-NY-ESO-1は日本の(株)イミュノフロンティアで開発されたお薬です。MIS416はニュージーランドのInnate Therapeutics社で開発されたお薬です。

”NY-ESO-1抗原”は、がん細胞だけに強く出ていて、正常の細胞にはほとんど出ていないとされています。唯一、精巣組織に発現していますが、リンパ球による攻撃は受けません。NY-ESO-1抗原は広範囲の腫瘍(例:食道がん、卵巣がん、乳がん、メラノーマなど)で発現していることが報告されていますが、高悪性度膀胱がんの約40%、進行期前立腺がんの約40%においても発現していると報告されています。

参加適格基準 《 参加できる人、参加できない人 》

この治験に参加できるのは以下のすべての条件を満たす患者さまです。

組織診で以下の悪性腫瘍と診断されている。
ⅰ)前立腺がん
標準治療で治癒が望めない。例としては以下のようなものである。
ⅰ)前立腺がん:薬剤的あるいは外科的去勢に抵抗性。
免疫組織染色法あるいはRT-PCR法で腫瘍のNY-ESO-1発現が確認されている。
同意取得日より3ヶ月以上の予後が望める。
20歳以上。
Performance status(PS,ECOG scale)が0-2(付表参照)。
以下の条件を充たす臓器機能を有する。
・白血球数:2,000/mm3以上
・ヘモグロビン:8.0g/dL以上
・血小板数:75,000/mm3以上
・総ビリルビン:基準上限値の1.5倍以下
・AST(GOT):基準上限値の3倍以下
・ALT(GPT):基準上限値の3倍以下
・血清クレアチニン:基準上限値の1.5倍以下
前治療から以下の期間を経過している。
・化学療法の最終投与日より2週間以上。
・放射線療法の最終照射日より2週間以上。
・手術日より4週間以上
・免疫療法の最終治療日より4週間以上。
本人から文書による同意が得られている。

 

この治験に参加できないのは以下のいずれかの条件に該当する患者さまです。

  1. 重篤な薬剤過敏症の既往がある。
  2. HBs抗原、HCV抗体、HIV抗体のいずれかが陽性である。
  3. 同意取得日より6ヵ月以内に治療を要した自己免疫疾患を有する。
  4. 活動性の重複がん(同時性重複がんおよび無病期間が5年以内の異時性重複がん)を有する。
  5. 緊急の放射線治療を必要とする。
  6. ステロイド剤(プレドニゾロン換算で20mg/日より多い)あるいは免疫抑制薬を使用している。
  7. 以下に示す重篤な合併症を有する。
    ・重篤な心疾患やコントロール不良の狭心症
    ・同意取得日から6ヵ月以内の心筋梗塞
    ・コントロール困難な糖尿病
    ・腸管麻痺・腸閉塞などの消化管障害
    ・抗生物質や抗真菌剤の全身投与を要する活動性の感染性疾患
    ・その他、治療の実施に重大な支障を来すと判断される合併症
  8. NY-ESO-1に関連した免疫療法を受けた既往がある。
  9. 妊婦、授乳婦および妊娠の意思のある女性である。
  10. その他、担当医師が本試験の対象として不適当と判断する症例である。
    なお、付随研究として患者さんの血液やがん組織を用いた研究を行っており、NY-ESO-1の発現を確認する患者さんにご協力をお願いしております。

付表:
PS(Performance Status) [ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)基準]

グレード Performance Status
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同様にふるまえる。
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが歩行、軽労働、座業はできる。例えば軽い家事、事務など。
歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助がいることもある。軽労働はできないが、日中の50%以上は起居している。
身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。