代表者あいさつ

身体に優しく有効な癌の治療方法として免疫療法への期待が膨らんでいます。最近の基礎的な研究の進歩により、私たちの身体の中に自然に備わっている免疫力が、癌の発生や進行をコントロールすることに大きく関わっていることがわかってきました。免疫力の中心になっているリンパ球には様々な働きを持ったリンパ球が含まれています。とりわけ癌細胞に反応するリンパ球の中では、癌細胞を直接見つけ出して壊してしまうキラーT細胞(細胞障害性T細胞)が重要であり、更にキラーT細胞の働きを助けるヘルパーT細胞、免疫反応を抑える役割を果たす制御性T細胞が、大切な働きをしていることがわかってきました。これらのリンパ球の働きを上手く操作することにより、癌の進行を遅らせたり、転移や再発を予防したり、又癌を完全に消滅させたりすることすら可能な事が、動物実験や免疫療法の臨床試験の結果から明らかになってきました。
私たちは、癌に対する免疫の基礎的な研究を進めると共に、得られた研究成果を臨床の場に持って行き、一日でも早く癌患者さんに役立つ新しい癌治療法にしたいと願って橋渡し研究(基礎研究から臨床への橋渡しを意味します)を行っています。
既に、これ迄私達が独自に開発してきました新しいがんワクチン(疎水化多糖ーがん抗原蛋白複合体ワクチン;CHP-HER2ワクチン、CHP-NY-ESO-1ワクチン、CHP-MAGE-A4ワクチン)の臨床試験を2002年から開始し、実用化への努力を進めています。CHP-NY-ESO-1ワクチンについては、2009年12月より、最終的には「がん治療薬」として広く用いられることをめざしての「治験」を開始しました。
又、身体の中の癌に反応するキラーT細胞を体外で増やして患者さんに輸注する細胞療法につきましても、従来のものとは全く異なった新しい治療法の臨床試験を2009年に始めました。キラーT細胞が癌細胞に反応する受容体(T細胞レセプター)の遺伝子を、患者さんのリンパ球に人工的に導入して治療に用いるという画期的なアプローチです。
私達の研究グループは、癌の克服を目指す世界の研究者/研究室を支援している財団法人 Cancer Research Institute Inc. (CRI)により設置された「がんワクチン治療学」教室と、バイオ企業として遺伝子医療の創出を目指すタカラバイオ株式会社により設置された「遺伝子・免疫細胞治療学」から成り立っています。
(2010年1月 珠玖 洋)